「あっ、司祭様とルディーン君。こっちよ」
朝起きてお爺さん司祭様と一緒に食堂に行ったらね、そこにはニコラさんたちが先に来てたんだ。
だから僕たちはみんなが座ってるテーブルに行ったんだけど、そしたら3人とも昨日と違ってお肌も髪の毛もつるつるピカピカですっごくびっくりしたんだ。
「おはよう! ニコラさんたち、すっごくピカピカになってるね」
「おはよう。そうなのよ。やっぱりお金持ちの使う石鹸は違うのね」
ニコラさんは僕に朝の挨拶をすると、昨日のお風呂の事を話してくれたんだ。
それによるとね、髪や体を洗う時にここのお風呂に置いてあるのじゃなくって、ストールさんが持ってきた石鹸を使ったんだってさ」
「もともと石鹸なんて使った事ないからどれでも同じなんじゃないかと思ったんだけど、あのメイドさんがきれいにしなきゃいけないからこれを使いなさいって渡してくれたの」
「そしたら全身があっという間に泡だらけになるし、洗った後に見たらちょっと白くなってる気がするのよね」
「そうそう。あれを見て、私たちの体、どれだけ汚れてたのよって思ったわ」
ニコラさんたち、今までは濡れた布で体を拭くか、皮があるとこに行った時に水浴びをするくらいしかしたことなかったんだって。
だから石鹸で洗った後の自分たちを見て、すっごくびっくりしたそうなんだよ。
「メイドさんが湯船に入る前に何度か体を洗いなさいと言っていたけど、洗った後の自分たちを見たら言われた意味が解ったわ」
「そうそう。あんなに汚れていたんだもん。もしそのままお湯に入ってたら、きっと大変な事になっていたわよね」
ニコラさんたちはね、朝ご飯を食べてる間、ず〜っと昨日のお風呂でストールさんに教えてもらった事を僕たちに話してくれたんだ。
「そう言えばさ、ニコラさんたちは今日、どうするの?」
「どうするって?」
「毒と司祭様は錬金術ギルドに行く事になってるんだ。だからその間、どうするのかなぁって」
僕たちはさ、採ってきたベニオウの実を使ってお薬が作れるかどうか調べるために錬金術ギルドに行かないとダメでしょ?
でもニコラさんたちは別に一緒じゃなくってもいいでしょ?
だから、ニコラさんたちはその間どうするのかなぁって思ったんだ。
そしたらさ、昨日のお風呂から出た後にストールさんから、色々教えないといけないから館に来てねって言われたんだって。
「私たち、お風呂の入り方も知らなかったでしょ?」
「だから、あのお屋敷に住もうと思ったら、いろいろな事を覚えないとダメってメイドさんに怒られちゃって」
僕はね、お爺さん司祭様が言ってたお風呂の入り方だけ知ってたらそれだけでいいって思ってたんだ。
でもストールさんは違ったみたい。
僕んちに住むんだったら、もっといろんな事を覚えないとダメなんだよってニコラさんたちに言ったそうなんだよね。
「そっか。じゃあニコラさんたちは、朝ご飯を食べたら僕んちに行くんだね」
「ええ、そういう事になるのよねぇ……」
それを聞いた僕は、じゃあ別々だねって言ったんだけど、そしたら何でかお姉さんたちはしょんぼりしちゃったんだ。
だから何でかなぁって思ってたんだけど、
「あっでも、もしルディーン君が一緒に来て欲しいって言うのなら一緒に行くけど!」
そしたら3人の中で一番下のアマリアさんが、急におっきな声でこんなこと言い出したもんだからびっくりしたんだよ。
「そっ、そうね。ルディーン君が一緒に来て欲しいのなら、私たちも錬金術ギルドに行くわ」
それにね、今度はユリアナさんまでがこんなこと言い出したもんだから、僕は頭をこてんって倒したんだ。
だってさ、さっきストールさんに教えてもらわないといけない事があるって言ってたでしょ?
なのに何で僕と一緒に行くなんて言い出したのか、全然解んなかったんだもん。
「えっと……ダメかな?」
そしたらさ、そんな僕にアマリアさんが、お願いするように一緒に行っちゃダメ? って聞いてきたもんだから、その顔を見て解っちゃったんだ。
そっか、錬金術ギルドに行ったらベニオウの実があるんだっけ。
僕が森の中から採ってきたベニオウの実って、普通に売ってるのよりもすっごくおいしいでしょ?
僕たちはベニオウの実からお薬を作れるかどうかを調べに行くんだけど、それに使うのは皮だけだもん。
だから昨日だって、残った実をみんなで食べたんだよね。
きっとアマリアさんはさ、自分たちも一緒についてったらそのベニオウの実が食べられるって思ってるんじゃないかなぁ?
だからお勉強しなきゃダメな事があるけど、行っていいんだったら僕たちと錬金術ギルドに行きたいなぁって言ってるんだね。
それに気付いた僕は、それだったらお姉さんたちも連れてってあげよっかなぁって思ったんだ。。
でもね、
「おはようございます。ハンバー様、ルディーン様」
そこにストールさんが来たもんだから、僕はびっくりして一緒に来てもいいよって言えなかったんだ。
「おお、おはよう。して、今日はどうしたのだ?」
「はい。ハンバー様とルディーン様を錬金術ギルドにお連れするために参りました」
僕とお爺さん司祭様はね、錬金術ギルドまで歩いてく気だったんだよね。
でもストールさんはそんなのダメだからって、錬金術ギルドに行くための馬車を用意して来てくれたそうなんだよ」
「それはまた、気を使わせてしまったのぉ」
「いえいえ。ハンバー様もルディーン様も、旦那様の大事なお客さまですから」
「でも、ロルフさんちから毎日ここに迎えに来るの、大変じゃないの?」
「ああ、それでしたら心配ありませんわ」
何日かしたら僕んちの工事が終わるでしょ?
ストールさんはね、ほんとだったらその日から僕んちに移るはずだったんだって。
でも昨日ニコラさんたちにお風呂の入り方を教えた時に、別の事も教えてあげるって約束したよね。
だからその予定をちょっと早くして、昨日からずっと僕んちに泊まる事にしたそうなんだよ。
「本来なら送り迎えは別の者が担当する予定でしたが、急遽ルディーン様の館に詰める事になりましたでしょう。ですから人に任せたりせず、わたくしが毎朝お迎えに上がることにしたのです」
若葉の風亭は商業地区の近くにあるから、イーノックカウの僕んちからそんなに離れてないんだよね。
それに元々そこに置いてある馬車で僕たちを迎えに来ることになってたんだって。
だからね、せっかくそこにいるんだから自分で来ようって思ったんだよってストールさんは笑顔で教えてくれたんだ。
「なるほど。そういう事であれば、世話になるとするかのぉ」
それを聞いたお爺さん司祭様は、それだったら毎朝迎えに来てもらっても大丈夫だねってにっこり。
って事で僕たちはストールさんの乗ってきた馬車で錬金術ギルドに行く事になったんだけど、
「あのぉ。すみません。やはり私たちはこの馬車には……」
ニコラさんたちはね、今日もやっぱりその馬車には載りたくないみたいなんだ。
そしたらそれを聞いたストールさんはにっこり笑って、ニコラさんたちにこう言ったんだよね。
「解りました。でしたらわたくしはハンバー様たちと錬金術ギルドまでお供しますから、あなたたちは先に館へと向かってください。戻り次第、指導を始めますので」
「えっ? はい、解りました……」
そう言えばニコラさんたち、ベニオウの実が食べたいから僕たちと一緒に錬金術ギルドに行きたいって言ってたんだっけ。
でもストールさんに、先に僕んちに行っててって言われちゃったでしょ?
だからお姉さんたちは宿屋さんの外で僕たちとお別れして、ちょっとしょんぼりした顔しながらイーノックカウの僕んちに行く事になったんだ。
残念。お姉さんズはストールさんの指導から逃げる事はできませんでした。
これがもしルディーン君が一緒に行こうって言ってくれていたのなら、お姉さんズは実質借金奴隷なのでついて行かないといけなくなるんですよね。
なのでストールさんが来るのがもう少し遅ければ逃げられたのにと、アマリアさん辺りは思っていたりします。
ですが、実を言うとストールさんはこの会話が始まった時にはすでに近くにいたんですよ。
でも朝食中だったから声を掛けなかったのですが、どうやら指導から逃げようとしているなと察してあそこで登場したわけです。